本日の【金の魂語】(きんのたまご)20180809
「この子の、頭を探してるんです…」
夕方、とある海岸で、
下はもんぺに上はオフホワイトのシャツを着た女性に
背後から声を掛けられました。
あきらかに、この世の人でも今の世の人でもないその女性は、
腕の中に、棉布でくるんだ物体を抱えながら私にたずねてきました。
そうか、この辺りは戦時中 多くの人が殺害された場所…
あまり、そのような悲劇は公表されず、知られてはいないけれど…
確かに…ここは、そういう悲しみが深く埋められた浜だ…
そう気が付いた私は、
“彼女”に敬意を払いつつ、
「可哀想に…。探しているのは、あなたのお子さんなのですね。
この辺りで別れてしまったの?」
とたずねると、彼女は…
「ありがとうございます…ありがとうございます…
分かってくれた…聞いてくれた…。」
そう言うと、胸に抱いていた棉布にくるまれたものを、
私に手渡してくれました。それは…
石のように重く感じられましたが、実際には何もなく、
子どもでもありませんでした。
その瞬間…
私の目の前に、その当時の出来事が走馬灯のように
映し出されたように見えて、真実が理解できました。
彼女に…
「あなたのお子さんは、あれから無事に助けられて、
お身内の家で立派に育てられたんですよ。あの世で、あなたに会いたいと
心配しながら思っておられますよ。声が聞こえませんか?
今のあなたには、もう聞こえるはずですよ…」
と言うと、彼女はその場に泣き崩れながら
「ありがとうございます…ありがとうございます……」
と、震えた声で応えながらも周囲を見渡すように立ちあがって、
岩陰の方に、とてもいい表情で歩いて行き…
光になりました。
亡くなられた皆さんの願いはひとつ…
「忘れないで欲しい」なのです。
自然災害でも戦争でも…
大勢亡くなられたなかの“一人の命の重み”を、
私たちは、もっと大切にしなければなりません。
彼女は、近くで亡くなっていた子どもを、
我が子だと思ったのかもしれませんし…
海岸に落ちていた石を身代わりに抱き締めていたのかも分かりません…。
どちらにしても、母親の思い…親の思い…女性としての思い…
人としての思い…私には、よく理解できました。
忘れてはならないのです。
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